その日Founders' Fallsのコンタクト、カダオ・ケストレル(Cadao Kestrel)から受けた知らせもそうした類の一つだった。奪われたのはある古代の魔法書で、噂によるとウォリアースのリーダーの1人と目されるキン
グ・サンダー(King Thunder)自らCircle of Thornsからこの本を盗んだのだという。
どうやらCircle of Thorns自体もこの本を入手したばかりだったらしく、奪ったウォリアースは早速恐るべき魔力を解放する儀式をしようとしているらしいのだ。
「大幹部自らお出ましとはその魔術書ってのはよっぽど凄い代物なのね。でももしそうならCircle of Thornsも血眼になって奪還しようとしてるんじゃないのかしら?」
早速現場に向かおうとしたLalaが、ふとカダオに尋ねた。
「それなんだが実はCircle of Thornsの奴らはどうもウォリアースの儀式の事を知っているふしがある。となると、この盗難自体Circle of Thornsの計画の一部という可能性もあるんじゃないかと俺は疑っている」
カダオはどうやらCircle of Thornsが何かの目的であえてウォリアースに魔法の儀式を行わせようとしているのではと考えているようだ。
キングスローの倉庫には彼女の予想通りCircle of Thornsの魔術師達がひしめいていた。だがここで儀式をしているはずのウォリアースの姿は一向に見えなかった。一体彼らはどこに行ってしまったのだろうか?
そしてようやく発見したウォリアースのメンバーの姿を見てヒーローは仰天した。なんとそれはウォリアースのリーダー、キング・サンダーその人だったのだ。
「一体何があったっていうの!?あなたの部下達はどこへ行ったのよ?」
行きがかり上キング・サンダーを救出したヒーローに、このウォーリアーズの大幹部は、がたがた体を震わせながら話し始めた。
「俺たちは盗んだ魔法書のパワーを解放する儀式を行ったんだ。だがその際中、突然恐ろしい炎が、そして影が俺たちを襲った。俺の仲間も、俺のウォリアース も、みんなあの炎に飲まれちまったんだ! だがCircle of Thornsの奴らは知っていやがったんだ。あの炎から現れた化物のことを。奴は自らをEnvoy of Shadow(影の公使)と名乗っていた。」
「Envoy of Shadowですって!?それでそいつはどうしたの?」
「俺はこの召還された化け物をコントロールしようとしたさ。だが奴は全く俺たちの言うことには従わなかった。そうとも、俺たちはCircle of Thornsに嵌められたんだよ!俺たちは異次元からこの化け物を召還するための生け贄に使われたんだ!」
「Circle of Thornsを裏切った見せしめとして誘拐されたのかしら?もしそうなら、アカリストは今度こそ、その魂をクリスタルの牢獄に繋がれて、オランベガの亡霊達に体を乗っ取られてしまうわ」
アカリストの身を案じて心配そうなLala。
「いや、必ずしもそうとは限らんな。彼はMAGIでは秘術に通じていたばかりではなく、失われたオランベガの歴史についてもMAGIにその知識を提供して
いたようだ。Circle of
Thornsの奴らにとって必要な知識をアカリストが持っていた可能性もある。既に行方についての手がかりは掴んでいる。まず彼を救出することが先決だ」
そう言ったカダオに見送られてヒーローはアカリストが連行されたであろうオランベガの奥地へと向かうブリックスタウンのポータルへと向かったのだった。
「いないわ!もしかしたらもう彼の身は・・・・」オランベガの奥地でアカリストを見つけることが出来ず焦燥するLala。だが探索中ふと手に取った本の1ページは彼女を驚愕させた。そこにはなんと著者としてアカリストの名が記されていたのだ。
おそるおそるページをめくるとそれは“A History of Oranbega”というタイトルの通りオランベガの歴史をつづった書物だった。分厚いこの本の内容を全ては理解することが出来なかったが、それがオランベガの創設から、もう一つの失われた魔法王国ムー(詳細は連続ミッション「ムーの血脈」参照」)との戦争に至るまでの記述が随所に為されていること位は彼女にも理解できた。
そしてその戦争の描写は非常に具体的で精緻なものだった・・・そう、まるでアカリスト自身がそれを目撃したが如く・・・。
魔術を使う能力があるが為に母国を追われた人々が、神の導きによって漂泊の末海を渡って新天地オランベガを切り開いたシーンからこの本は始まっていた。だ
がこの本はやがてオランベガがムーとの宿命的な戦争に突入し、ムーの空飛ぶ魔法戦艦の空襲によってオランベガに炎の魔法の雨が降りそそいだところでぷっつりと終わり、彼の作業がそのページで中断したのであろうことが垣間見えた。
「アカリストはなんでこんな事を知っていたのかしら?もしかしてそのことと彼が誘拐された事って何か関係があるのかも・・・」
そう考えた彼女は何冊かの本を掴むと、アカリストの行方を掴むべくオランベガの地下都市を後にしたのだった。
アカリストの行方についての次の情報が入ってきたのはしばらくの後だった。情報によれば意外にも彼はオランベガではなく、市内のあるオフィスビルに軟禁さ れているらしいというのだ。
だが彼がまだオランベガのクリスタルの囚人となっていないということは、Lalaを困惑させた。何故Circle of Thornsは裏切り者への復讐を直ちに遂行しようとはしないのだろうか?あるいは、もしかしたらCircle of Thornsは何かの目的で彼を必要としており、それが為されるまでは彼の魂をクリスタルの監獄に送ることができないのかもしれない。
いずれにせよ、Circle of Thornsが彼を用済みにする前にアカリストを救出しなければならないのだ。
数時間後・・・「苦痛のクリスタルの監獄が、奴にはお似合いだよ(imprisonment within a crystal of torment is too good for him)」
「反逆者を救うことなどできはせん、Cutie Lala!(you shall not rescue the traitor, Cutie Lala!)」
キングズローの古びたオフィスビルの中、突然出現したヒーローに驚いたCircle of Thornsの魔術師達が口々に叫んだ。そしてその奥には彼らに軟禁され脅迫を受けている魔術師の姿が垣間見えた・・・そうだ、彼がアカリストだ。
「よかった、やっぱり無事だったんだね。」
ようやくアカリストを救出し、安堵した表情で語りかけたLalaにアカリストが答えた。
「奴らが私を誘拐したことはそれほどビックリするような事じゃない。業火燃えさかる世界からの使者、Envoy of Shadowが現れたことは偶然とは思えないからね。」
「じゃあ、あなたが捕まったのは、例の地獄からの使者、Envoy of Shadowが現れたからだって言うの?」
思わぬところでEnvoy of Shadowの名を聞いて問い返すLala。
「この地に解放された地獄の公使は、甘い約束と盛大な土産をもってやってきた。だがCircle of Thornsは知りたがっていた。この闇の大使の主人、地獄の王子の提案を受け入れていいものかとね。
そのために遠い昔彼らと交渉をした私を探して助言させようとしたのだ」
「アカリスト・・・あなたって一体・・・」
「だが奴はここに現れ、既にCircle of Thornsにオファーを始めていた。その詳しい内容は私にも分からない。だがもし彼らが軽率にもかつてオランベガに降りかかったのと同じ恐ろしい脅威をもう一度受け入れるなら、結果は破滅的だ。」
「かつてムーはその大陸ごと破壊され、何百万人もの魂が地獄の中へと投げつけられた・・・これが地獄の王子の提案を受け入れた結末だったんだ。彼らとの取引によってより多くものを得ることなどありえないんだ」
なぜ、この悪魔の大使は彼らとの取引に際して生贄を要求するのだろうか?彼女の軽い疑問に答えるようにカダオがアカリストから彼女に渡すように言付かったというメモには地獄の住人と生贄についての詳細な考察が書かれていた。
それによれば、悪魔が生贄を要求するのは単純に彼らが人間の血と魂を好物にしているから、と言う理由だけではないらしい。実際のところ悪魔達は非常に尊大
で虚栄心が強く、自らへの賛辞の表れとして生贄を要求するという側面が大きいのだという。そして生贄にはもうひとつの意味もある。つまり悪魔を召還したも
のが、悪魔にどの程度のものを与えられるかというテストの意味もあるというのだ。
詰まるところもし召還者が最低でも一人の犠牲者を彼らに捧げることができ る力がなければ、すぐに召還者自らが悪魔の生贄になる運命だと言うことなのだ。
もちろん悪魔への生贄の儀式をとめたからといって、必ずしもCircle of ThornsとEnvoy of Shadowの取引をとめられるとは限らない。だが少なくとも生贄の魂を救う事は可能なのだ。
「ついさっき入った知らせによればCircle of
Thornsが13人の警官を誘拐し、生贄の儀式を実行しようとしているらしい。そしてどうやらその場にはEnvoy of
Shadowもいるようだ」Envoy of Shadowの行方を追っていたカダオがLalaに急報を告げた。
「わかった。それなら好都合ね。Envoy of Shadowを倒し、奴を地獄に送り返す絶好のチャンスだわ。」
だが、功をはやるLalaを横目にカダオは厳しい表情を崩さなかった。
「いや、まず儀式をやめさせることが重要だ。後は君の判断だが、正直言ってEnvoy of Shadowを倒す事は今の君では難しいと思うが・・・・。」
「・・・・・(馬鹿にしないで!私だって多くのVillainを倒してきたんだから。いくら相手が地獄の使者だからって、所詮は使い走りじゃないの)」
あたかもカダオの言葉に無言の抗議をするかのごとく、彼のアドバイスには何も答えないまま、彼女は人質が連れ去られたオランベガの奥地へと向かった。そこで彼女を待つものの強大さも知らずに・・・。
カダオの言葉に自尊心を傷つけられたヒーローだったが、まず人質を救出し、生贄の儀式をとめることが先決だということまで忘れたわけではなかった。
人質の警察官の姿を認めるや、今しも生贄の儀式を敢行しようとしているBehemoth Overloadに颯爽と挑みかかったのだ。
「貴様に儀式の邪魔はさせん!(The Ceremony must not be disrupted)」
雄叫びをあげるBehemoth Overloadに必殺の一撃を食らわし、人質を解放したヒーローだったが、そのときBehemothの屍の傍らに、長ったらしい文章が書かれた紙が転がっているのに気がついた。どうやらそれは悪魔の王子がCircle
of Thornsに宛てた手紙で、そこには『Hequat』と呼ばれる何かが復活するという恐ろしい前兆についての警告と、それに対抗するためになし得る手段、そして多くのよくわからない取引の内容が書かれているようだった。
「ごめんなさい。やっぱり貴方の言うとおりだったわ。」かろうじて一命を取り留めたLalaがバツの悪そうに肩を小さくしてカダオに言った。
「いや、謝ることはないさ。ともあれ君は大勢の命を救い、奴等の交渉を一時的にせよ食い止めることができたのだから。」
「だがアカリストによればEnvoy of
Shadowは、奴自身が言っていたように少なくとも倒すこと自体はできる。だが存在自体を破壊することはできないらしい。となれば、まずは奴のことより
も例の手紙にあったHequatについて調べるのが先決だろう。Lala、実はアカリストから君宛に手紙を預かっているんだ。」
Lalaはカダオから手紙を受けてとるや、その内容を一瞥した。そしてそこには驚くべきオランベガの歴史の真実がつづられていたのだ。
“・・・我々はあの戦争まで彼らの事は知らなかった。だがムーは何百年もの間、我々の許すべからざる敵となった。幾世代にもわたって鋼鉄の要塞島の中で、
彼らは我々と戦うべく訓練されていたのだ。彼らの女神は選ばれしこの土地に彼女を祭ることが正しいことと信じ、そして何世代にもわたって魔法の血統を強化
するため優性繁殖を行ってきたのだ。
そしてある春の日、彼女はムーの人々に私達の穏やかなオランベガへの攻撃を命じ、我々の都市を破滅と戦争とをもたらした。この女神の名、それがHequatだったのだ“
“Hequatの名は我々の神話の中にも伝わっていた。かつて私達の祖先を祖国から追い、海洋のかなたへと追いやったのが実は彼女の信奉者達だったのだから。
そして我々の神話によれば、彼女はエルミース(Ermeeth
(伝説的なTielekkuに学び、人々に魔法を教えた神だといわれている)の前妻であり、やがてもっとも強力な敵となったと伝えられていた。だが我々は
実際に彼女の軍隊が、我々の都市を焼き尽くすまで、エルミースもHequatも全く神話だけの存在だと思い込んでいたのだ・・・“
「どうやら、Circle of Thornsは地獄の王子との取引を進めることを決意したらしい。情報によればその証としてEnvoy of
ShadowがCircle of Thorns にThorn
Bladeを贈るということだ」戻ってきたヒーローを待ち受けていたのは、予想通りの展開だった。
「奴らにThorn Bladeを渡してはならん。それは破滅への第一段階なんだ。」
「そんなに恐ろしい武器なの?それって?」
「まずはこれを見てくれ」Lalaの問いには直接答えず、再び彼女にメモを手渡すカダオ。それはまたしてもオランベガの歴史をつづったアカリストからの手紙だった。
“・・・ムーの攻撃によって劣勢に陥ったとき、我々はドラスチックな策を講じた。
まず、我々は彼らの空飛ぶ魔法戦艦の空襲から都市を守るため、街ごと大地の下に沈めたのだ。
我々が重圧に耐え忍んでいた時、我々は暗い他の世界の力を見出した。悪魔の王子が我々への援助を申し出たのだ。
“The Circle of Thorns”・・・すなわちオランベガの統治評議会は紛糾したが、最終的には彼らの提案を受け入れることにしたのだった。
彼らの我々への最初の贈り物は Thorn Blade―人間を血でのぼせ上がった怪物に変える悪魔剣だった。この恐怖の兵器で武装した我々は戦いの流れを変え、そして、筆舌に尽くしがたい虐殺を 行ったのだ・・・“
「人を悪魔に変える剣!一体なんていうものを彼らは受け取ったっていうの!」
アカリストの手紙を読みながら怒りに震えるヒーロー。だがその先には更に恐るべき結末が記されていたのだ。
すべてを読み終わったとき、Lalaはまるで放心したかのように天を仰ぎ、そして深いため息をついた。ムーとオランベガはいつ果てるとも知れぬ相克の中で、互いに憎しみの心をたぎらせた挙句、悪魔達にその心を利用されて自ら滅びの道をたどったのだ。
「Thorn BladeがCircle of thornsの手に渡ることを絶対に阻止しないと。そうしないと古代の惨劇を再び繰り返してしまうわ」
「そうだ。だが現場にはEnvoy of Shadowがいる。そして今度は奴を一時的にもしても打ちのめし、Thorn Bladeを奪還する時間を稼がなくてはならないだろう」再び険しい表情でLalaを見つめるカダオ。
「わかってるわ。心配しないで。もう一人で奴に挑みかかることなんてしないわ」
「そしてもうひとつ。Circle of thornsとて過去のことを知らないはずは無い。彼らは何かEnvoy of Shadowについて我々の知らない情報を握っている可能性がある。それを見つけ出すんだ」
“・・・だが、まもなくムーが新しい戦術を発見して対抗し、我々の攻撃は停滞を余儀なくされた。
そこで我々は再び地獄の王子と交渉したのだ。彼は地獄の奥 深くから我々の為に軍勢を招集し、まもなく地獄の幽霊と幽鬼の軍勢がムーに向かって進撃を開始した。
更に大地にはベヒモスの群れが、海にはリヴァイアサン 達が彼らに、彼らの都市に、そして彼らの国土に襲い掛かったのだ。
悪魔の軍勢は子供や女性にいたるまで、ムーのすべての人々を虐殺しつくそうとした。
だが我々にもまだ慈悲の心は残っていたのだ。彼らを哀れに思った我々はわずかに残ったムーの人々を逃がそうとした。
しかしこの事は悪魔達の恐るべき怒りを買うことになった。
結局、彼らの生贄となり、この大地に沈んだ都市に、体の無い精神だけの存在としてとどまることだけが、彼らの怒りから逃れる唯一のすべだったのだ・・・。"
「このThorn Bladeを受け取る事は、古き盟約を再確認することになろう(The Acceptance of the Thron
Blades shall re-affirm old
treaties)」Lalaが現場に到着したとき、地獄の底から響いてくるような低い、しかし体全体に響かんとする太い声が洞窟の奥底から聞こえてき
た。ヒーローは今まさにEnvoy of ShadowがThorn Bladeを与えようとするその場面に遭遇したのだ。
「なぜ我に歯向かうのだCutie Lalaよ?我は不滅だ。そして貴様の力を遥かに凌駕しているのだぞ!(Why do you chalenge
me, Cutie Lala? I am immortal and beyoud your power!)」
一度彼に倒されながら、なおも立ち向かおうとするLalaの姿を眼前に捉えたEnvoy of Shadowは授与の儀式を中断すると、いかにも不思議というような面持ちでヒーローに問うた。
「確かにそうかもしれない。でもたとえそうであっても貴方にThorn Bladeを渡させるわけにはいかないの!そして何よりも、今の私には仲間がいる!」
そのLalaの言葉と共に、彼女の背後から急を聞いて駆けつけた4人のヒーロー・・・Marlboroboy、Daikaku、Kissme、Zalla
が姿を現した。Envoy of Shadowは不滅かもしれないが、一時的にでも彼の体を破壊する事は可能だ。そしてその事はThorn
Bladeを奪い、古代の惨劇を繰り返すことを阻止することにつながっているのだ。
そしていかにEnvoy of
Shadowといえで、5人のヒーロー相手では前回のようには行かなかった。長い戦いの後、ヒーローに振り上げんとした巨大な炎の剣がEnvoy of
Shadowの手から力なくスルリと零れ落ち、次の瞬間この巨大なベヒモスは巨体を震わせて崩れ落ちた。彼を取り巻いていた暗黒の炎は見る間にその光を失
い、後にはかつてそこにあったであろう生物の形を残した焼け跡だけが残されていたのだった。
Lala の知らせをうけてカダオがアカリストにたずねたところによれば、魔法の世界においては名前は非常に大きな役割を果たすものらしい。
実際本当の名前は多くの儀式でも重要なポイントなのだという。というのは、名前はそのものの実在を表しており、特にその実在が別の世界にある悪魔は、実在を表す名前を知ることなしにはその本体を傷つけることすらできないのだという。
そのためこの世界で何度Envoy of Shadowのような悪魔を倒そうとその実在を傷つけることができないなら、その表象は不滅であり何度でも舞い戻ってくるのだ。
もちろんCircle of Thornsはそのことを知っているに違いない。だから彼らはEnvoy of Shadowの本当の名前を知ろうとした。そして彼らとの取引が古代の悲劇を繰り返すことがないよう、いざというときの保険にしようと考えたのだろう。
そんな中アカリストから情報が彼女の元に届いた。
Circle of Thornsが遂に地獄の大使の本当の名前についての手がかりを見つけ、それを知るための儀式をオランベガで行うらしい、というのだ。Envoy
of Shadowの本当の名前を知り、今後こそ奴を地獄に送り返す絶好の機会が到来したのだ。
「もうまもなく、我々は闇から来たりし者の名前を知ることができよう(Soon we shall learn the name of that
which walk in darkness)」オランベガの奥底、儀式をおこなっていたDark
Mageが満足げに言う。しかしそこに現れた5人のヒーローを見てCircle of Thornsの魔術師達の顔色が変わった。
「侵入者だと?(an intruder?) 貴様はお呼びではない、Cutie lalaよ!(you are not welcome, cutie lala!)」儀式を取り仕切っていたSalizek The Gurdianが狼狽しつついった。
あっという間に彼らの儀式を蹴散らしたヒーロー達だったが、それだけではなかった。間もなくヒーロー達は彼らが行っていた儀式についてのメモを見つけたのだった。恐らくここにEnvoy of Shadowの本当の名前について書かれているに違いない。
Lalaにはメモに書かれている内容は理解できなかったが、恐らくMAGIならばこの内容を解読できるだろう。あと彼女達が成すべき事は、このメモをMAGIに届け、Envoy of Shadowを今度こそ地獄に送り返すだけだ。
「MAGIの解読の結果、奴の名前が判明した。そしてもうひとつ、Circle of ThornsとEnvoy of
Shadowの交渉の場所も判明したよ。後は君たちの準備さえできていれば、俺は奴を地獄に送り返すために、周辺にエマージェンシーフォースフィールドを
展開できるよう手配しよう」
ヒーロー達の覚悟を促すようにカダオがLalaの目を見据えて言った。だがもとより彼女達に異存などあるはずも無い。遂にこの恐るべき地獄の公使を未来永劫に滅ぼすときがやってきたのだ。
MAGIで解読されたEnvoy of Shadowの名前が記されたメモを手に最後の戦場へ向かう5人のヒーロー達。その決意を秘めた彼女達の背中にカダオが声をかけた。
「幸運を祈る(Good luck)」
「どうもいやな予感がする。なにかずっと大きな出来事の始まりではないのかという気がするんだ。Lala、すぐキングスローに向かってくれ。儀式をやめさ せて盗まれた本を取り返し、Circle of Thornsとウォリアースがそれぞれ何を企んでいるのか解き明かすんだ」
不意に明かされた魔法王国ムーの最後についての真実はLalaに衝撃を与えた。彼らを滅ぼしたのは取るに足りない敵などではなかった。ムーは地獄の王子とオランベガの軍勢によってその大陸ごと地上から消滅させられたのだ。
「でもだったらどうしてオランベガも滅んだのよ?いったい地獄の王子はオランベガと何の取引をしたっていうの?」
「・・・まだ奴を止めるチャンスはある。奴は契約のためには生け贄の儀式を要求するはずだ。それを止めることが出来れば、あるいは・・・・」
彼女の質問には答えないまま、うめくような低い声でアカリストが呟いた。
「それにしても“Hequat”ってなんのことだろう?Circle of Thornsはなんか凄くこれを恐れているように見えるけど・・・」Lalaが初めて聞く名前に思いをめぐらしていたその時、まるで地獄の奥底から響いて くるかの如き低い、不気味な声があたりの張り詰めた空気を震わせた。
だが彼らには悪いがヒーローとしても邪悪な儀式を容認するわけにも行かなかった。そしてビル内の魔術師達を一 掃した彼女は、彼らの残したメモから、どうやらHequatが間違いなく存在しているという証拠を得たのだった。
そして、この事はHequat の恐怖に慄くCircle of Thornsが地獄の王子との取引を決意する可能性が高いことを示していたのだ。